バイクが好きな方の中には「冬は寒くてバイクを使わない」「雪などの天候要因で乗れない」など、冬季は乗らずに保管しておく方がいます。冬季にバイクを長期保管することを通称「冬眠」と呼びます。
適切な保管方法(冬眠)をしないと、春先にバイクが使えない状態になっていることもしばしば。大切なバイクを長期間保有するには、メンテナンスも欠かせません。
この記事ではバイクの冬眠方法を解説するとともに、冬眠時期のバイク保険の取り扱い方を紹介します。
目次
自宅でバイクを冬眠する方法
「冬季のバイク保管は、バイクショップに預けておまかせ!」という方がいる反面、「預けるのにお金が掛かりすぎる」「他人に任せるのは不安だ」という方もいらっしゃるでしょう。自宅でバイクを冬眠させる方法を解説します。
エンジンオイルを交換する
一般的なエンジンオイルの交換頻度は、走行距離3,000kmごと、もしくは6ヶ月ごとの交換が推奨されています。定期的にエンジンオイルを交換していない場合は交換してから冬眠させるのが適しているでしょう。
エンジンオイルは酸化劣化しやすく、冬眠中にエンジンオイルの劣化が進行してしまう恐れはありますが、エンジン本体にダメージを与えてしまう前に一度交換しておくと安心です。
新しいオイルに交換した後は、一度エンジンをかけておきましょう。エンジンをかける理由は、新しいオイルを循環させておくことで古いオイルの滞留を防げるためです。
ガソリン満タン給油
ガソリンを満タンに入れておくと湿気が入るスペースが少なくなるので、タンク内のサビや結露を防止できます。
インジェクション車(FI車)の場合はガソリンを給油するだけで対策は完了です。
一方でキャブ車の場合は、キャブレター内のガソリンを抜いておき、燃料コックはOFFにします。燃料コックOFFがなければPRI以外にしておきます。
燃料コックがPRIのままだと、揮発して減ったガソリンを補給しようとしてガソリンが送り続けられてしまい、満タンにしたガソリンタンクの中身が減ってしまいます。ガソリンタンク内のガソリンが減ってしまうと湿気が入り込みやすくなるので、満タンに給油した意味がありません。
さらにキャブレター内にタールのような粘着性物質(ワニス)が蓄積してしまい、キャブの分解点検(オーバーホール)が必要になってしまいます。
燃料添加剤を入れる
燃料添加剤とはガソリンの酸化や腐食を防止するものです。燃料添加剤の成分には清浄剤が入っているものが多いため、カーボン・ワニス・ガム状物質の堆積を防ぐだけでなく、除去してくれる効果があります。
冬季はエンジンを動かせない日が多くなってしまうので、前述したようなエンジンに悪影響を与えてしまう物質が堆積しがち。燃料添加剤を入れておくと、冬眠明けにスムーズにエンジンが掛かります。
バッテリーを取り外す
バッテリーは自然放電してしまうため、取り外しておきます。取り外しが困難な場合はマイナス端子を外しておくだけでも構いません。
取り外す際はショートを起こさないように、次の手順を順守すべきです。
- 外す場合はマイナス端子から外す
- 装着時はプラス端子から接続する
バッテリーがショートすると一気に電流が流れるため、機器が故障してしまうおそれがあり、最悪火災が発生してしまうことにも繋がりかねません。手順を間違えないように覚えておくとよいでしょう。
冬眠中にバイクが盗まれてしまう心配もありますので、その際はイモビライザーを作動させておきたいですね。イモビライザーを作動させておく場合は、トリクル充電式充電器を使って連続充電する方法があります。
※トリクル充電式充電器とは、常に微弱な電流を流し続けて過充電を最小限に抑えつつ、バッテリーが完全放電するのを防ぐ。
各部のサビ対策
バイクは金属部品が多いため、湿気が多い場所に置いておくとサビてしまう可能性が高くなります。サビ対策としては、バイクを洗車して汚れを落とした後、防錆スプレーやシリコンスプレーを塗布することがあげられます。
そのほかだとオイルコーティングと呼ばれる方法もあります。既製品のスプレーを購入せずとも、エンジンオイルの廃油などを金属部品に塗布する方法があります。ただ、この方法だとオイルにまみれてしまうため、春先に冬眠から復活させる際はオイルを洗い流す手間が掛かってしまうのが難点です。
車体を立てておく
バイク本体に付いているセンタースタンドやメンテナンススタンドを使用して車体を立てておけるとよいです。
車体を立てておく主な理由は以下の2点です。
- タイヤが変形してしまうおそれがある
- タイヤがひび割れを起こす可能性がある
常に車重がかかっていると、車重を受けている側のタイヤが変形してしまうおそれがあるため真っ直ぐ走行することができなくなってしまいます。
また、接地面がコンクリートの場合は外気温と同等ほどまで冷たくなるため、ゴムの特性上タイヤがひび割れを起こす可能性がでてきます。ひび割れを防ぐために、地面に木片を置き、コンクリートに接地させないようにする対策も有効です。
車体を立てられない場合は適宜車体を動かして、同じ箇所が接地し続けることを防ぐことで対策できます。
タイヤの空気圧は高めにする
ゴムの特性上、タイヤ内の空気は自然に抜けてしまうため空気圧は高めにしておきます。
冬眠明けに空気が抜けてしまっていると、バイクを動かしたくても動かせなくなってしまいます。
空気圧の目安は以下の通りです。
- 車体を立てておく場合は規定圧の1割増し程度
- 立てない場合は2割増し程度
空気圧が高すぎるとバースト(パンク)してしまったり、エアバルブから漏れる懸念があるため、空気の入れ過ぎには注意しましょう。
タイヤの注入ガスは、N2ガスを入れておくと抜けにくいため安心です。
バイクカバーをかけておく
屋外保管だと紫外線や直射日光で劣化する可能性があります。パーツが日焼けしてしまい、色褪せていると一気に年季を感じてしまうため、バイクカバーを掛けて対策しましょう。
ただし、湿気対策を行ってからカバーを掛けないとサビが発生する懸念があるので注意しなければなりません。
また、バイクカバーより毛布がよいという意見もあります。バイクカバーは透過性・透湿性が少ないため、雨や雪の影響を防ぐことができますが、降ったあとに地表からの湿気が上がってきた場合に逃がしにくく、バイクカバー内に湿気を留めてしまいます。そのため、透湿性の面でいうと毛布の方がよい場合もあります。しかし、雨や雪で濡れてしまうと元も子もないため、定期的にバイクカバーを外してバイクを乾燥するのが最適解でしょう。
定期的にエンジンを始動する
冬季は天候要因などで運転できないにしろ、定期的にエンジンを始動するとよいです。エンジンが掛かるかの確認を含め、エンジンオイルやガソリンを循環させることができれば乗り出しの際にも安心できます。
冬眠対策やエンジン始動ごとに再度冬眠の点検をしなければならないのは手間だと感じる場合は、バイクショップに預けるのが最適な判断だと思います。バイクショップに預ければセキュリティも気にする必要がないため、安心・安全な最適解になるでしょう。
冬眠時期の保険は解約する?
冬眠時期にバイクに乗らない場合は、任意保険の取り扱いはどのようにするのがよいのでしょうか。「解約した方がいいのでは」と悩む方も良くお見かけします。
結論から述べると、解約はしない方がよいです。理由を含め、後述します。
解約はNG!冬は最低限補償のプランに切り替える
任意保険を一旦解約してしまうと等級が進まず、長期目線で見ると支払う保険料が高くなってしまいます。そのため、解約はおすすめできません。
また保険料の支払いに関しては、一括払いだと保険料が安くなりますが、「冬は絶対に乗らない」ということであれば月払いにしておき、冬季の保険だけ最低限の補償プランにしておくと支払う金額が安くなります。ただし、乗りはじめは保険を元に戻すのをお忘れ無いように注意してください。
中断という手もある
冬眠シーズンを機にバイクを手放す場合もあるかと思います。その場合においても任意保険を単に解約するのはお得だとはいえません。
再度バイクに乗る可能性があれば、任意保険を中断として中断証明書を発行すれば10年間は等級を引き継ぐことが可能です。基本的には同居のご家族に対しても保険の等級を引き継ぐことが可能なので、一時の考えで積み重ねてきた等級を手放す選択はせず、とりあえず中断証明書を発行しておくのもよいでしょう。
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著者情報
重松 雄太
フリーランスのライター。
統計データと実体験をもとに、難しい内容をわかりやすく解説します。
好きなものはボクシング・バイク・ケーキ。