購入の前に試乗として、ツーリングのために普段とは異なるバイクに乗る、などレンタルバイクを借りて運転する場合があります。レンタルバイクであっても自分のバイクであってもバイクに乗るときに重要となるのが保険です。レンタルバイクの任意保険はどのようになっているのでしょうか。
基本的に利用料金に保険も含まれている
事業としてレンタルバイクを行っている業者からバイク(125cc超)を借りる場合、基本的には最低限の対人賠償、対物賠償、搭乗者傷害保険は利用料金の中に含まれています。
というのも、レンタルバイク事業を行うのに必要な許可を受けるための条件に、十分な補償を行いうる保険に加入することが含まれているからです。そのため、利用条件を無視したようなバイクの乗り方をしなければ事故時の補償がないままバイクを運転するということはないので安心しましょう。
ただし、出発時に申し出なかった人が運転した場合や飲酒運転した場合、警察に事故の届け出をしなかった場合、返却時間を無断で超過した場合など保険を適用できない場合もあります。どの項目も通常問題ない内容だと思いますが、借りる前によく確認しておきましょう。
立ちゴケであっても警察へ届け出を
保険を使う条件として警察に事故を届け出ることが基本的に含まれています。これは事故証明が必要となるからです。立ちゴケ程度であったとしても警察に届け出るようにしましょう。
また、125cc以下のバイクについてはこの説明は必ずしも当てはまらないので、保険がどうなっているのか事前にしっかりと確認するようにしましょう。
補償内容は要確認!
補償金額
レンタルバイク事業を行うための許可を得るために保険の加入が必要と書きましたが、その条件となっている補償金額は以下の通りかなり低い金額となっています。
- 対人保険:8000万円以上
- 対物保険:200万円以上
- 搭乗者保険(人身傷害保険も含む):500万円以上
さすがに対人賠償は無制限としているところがほとんどですが、対物賠償については1000万円などとなっている業者もあります。1000万円でも大体の事故には対応できますが、電車を止めてしまった場合や店舗に突っ込んでしまった場合などでは賠償額が1000万円を超える可能性もあります。万が一に備えるのであれば対物賠償も無制限の業者が安心でしょう。
免責金額(自己負担額)
レンタルバイクの基本利用料に含まれる保険では対物賠償に5万円などの免責金額(自己負担額)が設定されていることが多いです。例えば、対物賠償:1000万円(免責5万円)、対物賠償:無制限(免責5万円)などのようになっています。
この場合、たとえ無制限となっていても対物賠償を使うような事故を起こしたら5万円の自己負担が発生しますので注意しましょう。
車両補償
事故などで借りたバイクに傷をつけてしまった場合の車両補償はオプションで加入する形式になっていることが多いです。車両補償がついていないと、単独での事故や転倒では修理費用が全額自己負担となってしまいますし、相手のいる事故でも自分の過失分は支払う必要があります。
特に初心者や乗り慣れていない場合は、車両補償をオプションで付けたり初めから修理費用に上限が設けられていたりする業者でバイクを借りるとよいでしょう。
NOC(休業補償)に注意しよう
事故や転倒等でバイクが損傷した場合、修理等でその車両が使えない期間の営業補償の一部としてNOC(ノンオペレーションチャージ)が請求される場合があります。金額は業者によって異なりますが、自走可能な場合は2万円、自走不可能な場合は5万円というような金額での設定が多いです。
対物賠償や車両補償の自己負担分とNOCを合わせて事故時には10~20数万の負担が発生する場合もあります。事故時にどのような負担が発生するのか事前によく確認するようにしましょう。また、オプションを追加していくことでこうした負担を減らしていける業者もあります。しかし、オプション料もかかるのでどこまでの負担なら許容できるか考えたうえでオプションの追加も検討しましょう。
自分の加入するバイク保険は使える?
家の近くや旅行先でレンタルバイクを借りようと思ったものの、保険の内容が薄いものしかなくて心配、ということもあるかもしれません。自分でもバイクを持っていてバイク保険を契約している場合、自分のバイク保険を使うことはできるのでしょうか?
他車運転特約が使える場合もある
契約しているバイク保険に他車運転特約がついている場合、他車運転特約を使って補償を受けられる場合があります。
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他車運転特約とは、記名被保険者やその親族が、他人のバイクを借りて乗車している際に起こした事故について、他人のバイクを自身の契約中のバイクとみなして補償を受けられる特約のことです。この際、借用していたバイクで契約した保険に優先して、契約中の保険から契約内容に応じて保険金が支払われます。
ただし、以下のような注意点があるのでよくご確認ください。
保険会社によって内容が異なる
他車運転特約による補償内容は保険会社によって異なります。そもそもバイクに関しては対象外となっている会社もあり、補償対象となっている保険会社でも補償される内容が異なる場合があるので注意が必要です。特に車両に対する補償は他車運転特約では対象外となっていることも多いので事前の確認が大切です。
同じ用途車種のみが対象
他車運転特約で対象とされるバイクは、自身がバイク保険で契約しているバイクと同じ用途車種になります。バイクの場合、二輪自動車と原動機付自転車で分かれています。
例えば、契約しているバイクが原付であれば、他車運転特約で補償されるのは原付を借りて運転する場合です。二輪自動車を借りて運転している時の事故は補償されません。
契約している保険で補償対象外の場合、他車運転特約でも補償を受けられない
例えば、契約しているバイク保険で21歳以上補償の年齢条件をつけている場合、他車運転特約でも20歳以下の人が運転していた場合は補償の対象外となります。同様に、バイク保険に人身傷害をつけていない場合は他車運転特約でも人身傷害による補償は受けられません。
駐車・停車中の事故は対象外
他車運転特約は一時的に借りたバイクを運転中の事故を補償するもので、駐車または停車中の事故は補償対象外となります。信号待ちや踏切での列車通過待ちなどで止まっている場合は運転中となりますので、その点では安心してよいでしょう。
まとめ
レンタルバイクを事業としてきちんと行っているところでバイク(125cc超)を借りるのであれば、利用料の中に保険も含まれていると考えてよいでしょう。ただし、対物賠償が無制限ではなく1000万円などと制限されていることもあるので、補償内容は事前によく確認しておきましょう。他に、借りたバイクを傷つけてしまった場合の補償や免責金額、NOCについても事前に確認しておきましょう。
また、自分で契約しているバイク保険に他車運転特約がついていれば、そちらで補償を受けられる場合もあります。ただし、いろいろと条件や制約がある特約なので、どのような場合に使えてどのような補償を受けられるのか事前に確認しておきましょう。
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著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。