コロナ禍という事情もあり、電車での移動を避けるための利用やバイクでアウトドアに出かけるなどの理由で二輪免許の取得希望者が増えているようです。「バイクに乗る」という新たな楽しみを見出す人が増えるのは良いことですが、バイクは死傷事故のリスクを伴う乗り物です。免許証を取得した後のバイク運転における危機管理も行いましょう。
目次
ライダーは増えている!?
バイクを公道で運転するには、免許証が必要です。普通自動車免許を取得していて、車と原付バイクの両方を運転する事があるという人もいるでしょう。
まずは、バイクを運転するために必要な免許証について確認しておきましょう。
四輪自動車 | 大型二輪免許 | 普通二輪免許 | 原付免許 | ||||
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大型免許 | 普通免許 | 小型免許 | |||||
大型自動車 | ● | ||||||
普通自動車 | ● | ● | |||||
大型二輪車 | ● | ||||||
普通二輪車 | ~400cc | ● | ● | ||||
~125㏄ | ● | ● | ● | ||||
原付(50㏄以下) | ● | ● | ● | ● | ● | ● | |
免許証取得可能年齢 | 20歳以上 | 18歳以上 | 16歳以上 |
バイクを運転するために免許を取得するためには、学科と実技の試験を受験しなければいけません。
警察庁が発表する運転免許統計資料からバイク免許取得者の推移を調べたところ、2020年度は2019年度に比べ新たにバイクの免許を5.9%も増えています。
16歳から取得できる50㏄以下の原付バイクの免許取得者は2018年度、2019年度と前年より減っていますが、2020年は2019年より3.7%増加しています。50㏄以下の原付バイクは四輪自動車免許があれば乗る事ができるので18歳以下の若年層の取得が増えたと考えられます。
また、大型二輪車は7.7%の増加、普通二輪車は全体で6.1%の増加となっています。2020年はコロナ禍で人との接触や行動制限が行われた年です。公共機関を利用しての移動を避けるためにバイクを利用しようと免許証を取得しようと考えた人が増えたという背景もありそうです。
年度 | |||||
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2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | ||
大型二輪 | MT | 78,103 | 79,497 | 82,294 | 88,591 |
AT限定 | 111 | 100 | 101 | 183 | |
普通二輪 | MT | 181,234 | 186,058 | 192,897 | 207,430 |
AT限定 | 7,248 | 9,479 | 7,108 | 6,994 | |
小型限定 MT | 23,238 | 26,037 | 30,649 | 32,117 | |
小型限定 AT小型限定 | 14,952 | 18,110 | 22,386 | 21,935 | |
原付 | 112,487 | 105,641 | 98,069 | 101,690 | |
合計 | 417,373 | 424,922 | 433,504 | 458,940 |
忘れてはいけないバイク事故のリスクと保険
400㏄以下であれば16歳から取得できるバイクですが、バイクも公道を走る乗り物であり、事故のリスクに備える必要があります。
バイク事故に備えるバイク保険にも「自賠責保険(強制保険)」と「バイク保険(任意保険)」があります。自賠責保険は強制保険のためバイクを運転する人は必ず加入する必要があります。
バイクの自賠責保険
自賠責保険は事故が発生した際「事故の被害者を救済する」「加害者の経済的負担を軽減する」ことを目的とした、バイク所有者に加入が義務付けられている保険です。自賠責保険への加入は法律で義務付けられており、無保険でバイクを運転した場合、以下の罰則を受けることになります。
罰則
・罰則:1年以下の懲役または50万円以下の罰金
・違反点数6点:免許停止
自賠責保険の補償範囲
自賠責保険の補償範囲は対人賠償のみで、事故相手の死傷に対する賠償しか補償されていません。事故相手の自動車やバイク、また自分のケガやバイクの補償を受けることはできません。また補償額の上限も決められているので、上限額を超えた額は自己負担です。
損害の範囲 | 支払限度額(被害者1名あたり) | |
---|---|---|
傷害による損害 | 治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料 | 最高120万円 |
後遺障害による損害 | 逸失利益、慰謝料等 | 神経系統・精神・胸腹部臓器に著しい障害を残して介護が必要な場合 常時介護のとき:最高4,000万円 随時介護のとき:最高3,000万円 後遺障害の程度により 第1級:最高3,000万円~第14級:最高 75万円 |
死亡による損害 | 葬儀費、逸失利益、慰謝料(本人および遺族) | 最高3,000万円 |
死亡するまでの傷害による損害 | (傷害による損害の場合と同じ) | 最高120万円 |
加入方法
バイクの自賠責保険は、バイクを購入する時の販売店で加入する事ができます。バイクの販売店は代理店の役割も担っているので、バイク購入時に同時に加入すると忘れることがないためよいでしょう。また、126㏄~250㏄のバイクと原付バイクの自賠責保険はコンビニや郵便局で加入する事ができます。インターネットのHPから保険会社に直接申し込む事も可能です。
バイクの任意保険
バイクにも任意保険があります。バイクの任意保険は一般的に「バイク保険」と呼ばれている保険です。自賠責保険だけではカバーしきれない部分を補うために加入します。
バイク保険の補償内容は下記の通りです。
補償の対象 | 人 | 物 |
---|---|---|
他人への賠償 | ・対人賠償保険 ※自賠責保険では足りない不足分 |
・対物賠償保険 |
ご自身の補償 (同乗者) |
・人身傷害保険 ・搭乗者傷害保険 ・自損事故保険 ・無保険車傷害保険 |
・車両保険 |
必ず必要な「相手への補償」
相手への補償として必ず必要な補償は対人賠償保険と対物賠償保険です。
相手への補償として必ず必要な「対人賠償保険」は、バイクを運転する際の事故などにより相手にケガをさせたり死亡させたりした場合に相手への賠償として保険金が支払われます。自賠責保険から支払われる保険金額を超過した部分について補償されます。
裁判で1億円、2億円といった高額の賠償金請求となったバイク事故も起きています。相手への補償である対人賠償保険は事故を起こした相手に十分な補償を行えるように「無制限」で設定する事が基本です。
「対物賠償保険」も相手への補償として必ず加入しておく必要があります。対物賠償保険は、相手のモノ(車や家屋、ガードレール、信号、壁等々)を壊してしまった時、その損害の賠償として保険金が支払われる保険です。相手のモノ(車や家屋、ガードレール、信号、壁等々)を壊した場合には、その損害に対して自賠責保険では補償されません。そのため、任意保険で備えておきましょう。
必要な補償を選ぶ「自分への補償」
自分への補償として備えておきたい補償は人身傷害保険です。
自分への補償として「人身傷害保険」があります。人身傷害保険は、バイク事故によって自身や同乗者が契約中のバイクに搭乗中死傷した時の補償を受けられます。ケガの治療費(実費)や、後遺症による逸失利益や介護料、休業損害や精神的損害への補償を保険金額を上限として事故の過失割合に関わらず実費の補償を受け取れます。
自分がバイク事故により死傷した場合の補償に「搭乗者傷害保険」というものもあります。搭乗者傷害保険と人身傷害保険は内容的に重複する点も多くため、保険料を抑えて自分への補償にも備えたい場合は、人身傷害保険のみを選択するという事もできます。
また、自分への備えでは、自分のバイクの損害に備える車両保険などもあります。他にも自損事故や無保険車との事故に備える補償など自分への補償を増やすことで保険料は高くなりますが手厚くすることが可能です。
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ビギナーライダーは特に安全運転に気を付けよう!
バイクの免許証を取得して初めて自分のバイクで公道を走る時は経験したことのない緊張やワクワクがあるでしょう。しっかり自賠責保険や任意保険に加入して備えある状態で走る事はもちろんですが、安全運転が一番大切です。
ビギナーライダーだからこそ運転の基本を大切にこの先も優良ライダーでいることを目指しましょう。いつまでも心得ておきたいバイクを安全に運転するために大切なことを紹介します。
交通ルールをしっかり守る
交通ルールはしっかり守りましょう。
スピードは速すぎず、遅すぎず、信号はしっかり守り、ハンドサインも忘れずに行いましょう。当然、無理な追い越しは厳禁です。
交通ルールをしっかり守ることが安全運転の第一歩です。
バイクに乗る時は気を引き締める
警視庁の統計でバイクの交通死亡事故の発生は通勤時、退勤時に多く、そして単独事故が多いことがわかっています。
普段走っている道で事故が起きているということ慣れた道路での気の緩みが大きな原因となってと考えられます。いつもの道だからといって気を抜かずに、しっかりと予測を立てながら運転することを心がけましょう。
バイクに乗る前の整備、準備も忘れずに
ブレーキワイヤーやアクセルワイヤーなどバイクのパーツは摩耗していきます。使っていなかったとしても老朽化していくものです。たとえ法定点検がなかったとしても定期的に整備するようにしましょう。
ブレーキの利きが悪ければ運転中にブレーキ不良が原因でバイクが止まらなくなるかもしれません。またエンジントラブルでバイクが動かなくなり、後ろから来た車が急な減速に対応できず大事故になってしまうかもしれません。しっかりとバイクを整備することは事故を防止することにつながります。
またバイクを乗るときには服装にも注意が必要です。バイクの死亡事故ですが半数は頭のケガが原因で死亡しています。リスクを少しでも減らすためにせめてサイズの合ったヘルメットをかぶって運転するようにしましょう。加えて運転の際は運転中に周りのものに引っ掛かるような服装は避け、動きやすい服装で運転するようにしましょう。もし胸部プロテクターを持っているのであれば、運転の際は着用すると事故にあった際も被害を軽減できます。可能な限り装着して運転するよう心がけてください。
まとめ
警察庁が発表する運転統計資料ではバイクの免許取得者は増加傾向にあるようです。コロナ禍を経験し人々のライフスタイルも変化する中、移動手段にバイクを利用するという人も増えているのかもしれません。
バイクの免許を取得し、バイクライフを楽しんでいる人は多くいます。楽しいバイクライフにするためにはルールを守って安全運転で事故なく過ごすことが大切です。それでも、バイク事故は起こってしまう事があります。バイク事故は特に死傷事故につながりやすいです。安全運転はもちろんですが、自賠責保険、任意保険(バイク保険)で十分に備えておきましょう。