バイクで二人乗り(タンデム)を楽しんでいる、これから二人乗りを楽しもうと思っているという方も多くいると思います。そこで忘れてはいけないのがバイク保険です。事故相手への補償はもちろんのことですが、二人乗りの場合、同乗者が事故で死傷してしまった場合の補償も考える必要があります。きちんと補償を受けるためにはどうしたらよいのでしょうか?
目次
自賠責保険での補償は?
バイクを運転するなら必ず加入する必要のある自賠責保険ですが、同乗者が死傷した場合にも使えます。自賠責保険は対人賠償しかないのですが、同乗者についても対人賠償で補償を受けられるのです。
ただし、注意が必要なこととして、対人賠償は「他人」を死傷させた場合の補償であるので、運転者や運行供用者は補償の対象とはなりません。運行供用者の範囲については難しいところがあるのですが、基本的にバイクの所有者は運行供用者と認められることが多いです。つまり、バイクを友人に貸してそれに同乗者として二人乗りしていた場合、運転者である友人だけでなくバイク所有者の自分も補償を受けられない可能性が高いです。
なお、任意保険では配偶者や子供などは対人賠償の対象となりませんが、自賠責保険では運行供用者でなければ配偶者や子供であっても補償対象となります。
自賠責保険の限度額
自賠責保険で同乗者も補償を受けることができますが、補償を受けられる金額には限度があります。実際は細かく項目ごとに支払基準が定められていますが、傷害、後遺障害、死亡についての限度額を紹介します。詳細の内容については国土交通省の自賠責保険ポータルサイトをご確認ください。
損害の範囲 | 支払限度額(被害者1名あたり) | |
---|---|---|
傷害による損害 | 治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料 | 最高120万円 |
後遺障害による損害 | 逸失利益、慰謝料等 | 神経系統・精神・胸腹部臓器に著しい障害を残して介護が必要な場合 常時介護のとき:最高4,000万円 随時介護のとき:最高3,000万円 後遺障害の程度により 第1級:最高3,000万円~第14級:最高 75万円 |
死亡による損害 | 葬儀費、逸失利益、慰謝料(本人および遺族) | 最高3,000万円 |
死亡するまでの傷害による損害 | (傷害による損害の場合と同じ) | 最高120万円 |
自賠責保険は被害者の最低限の救済という意味合いが強く、必ずしも十分な補償を得られるとは限りません。そこを補うのが任意保険です。
任意保険での補償は?
自賠責保険では配偶者なども対人賠償の対象となりますが、任意保険では家族(父母、配偶者または子)は対人賠償の対象とはなりません。それゆえ、二人乗りする相手がだれかによって補償内容を考える必要があります。
同乗者が他人(友人・知人など)の場合
同乗者が友人や知人など「他人」にあたる場合は自賠責保険と同様に対人賠償で補償を受けることができます。自賠責で一定額までは補償を受けられますが、それを上回る損害が発生したとしても任意保険の対人賠償があるので安心です。対人賠償の保険金額(支払われる保険金の上限)は基本的に無制限で契約するので、多額の賠償を負ったけど保険金では払いきれないということはないでしょう。
同乗者が家族(父母・配偶者・子)の場合
同乗者が家族(父母・配偶者・子)の場合、任意保険では対人賠償の補償の対象外となります。しかし、補償が全く用意されていないわけではありません。人身傷害保険や搭乗者傷害保険を補償内容に含めていれば、そこから保険金が支払われます。
人身傷害保険や搭乗者傷害保険というのは、事故時の自分側の死傷に対しての補償です。人身傷害保険では保険金額を上限として実際の損害額(相手のある事故で賠償金として受け取った分などは除きます)を保険金として受け取ることができ、搭乗者傷害保険では死傷の状況に応じてあらかじめ定められた金額を保険金として受け取ることができます。
家族を後ろに乗せて運転する機会がある場合には人身傷害保険や搭乗者傷害保険を補償内容に含めることを検討しましょう。
人身傷害保険と搭乗者傷害保険の違いは?
人身傷害保険も搭乗者傷害保険も自分側の死傷に対する補償なので違いが分かりづらいという方もいると思います。そこで、人身傷害保険と搭乗者傷害保険の違いについて整理しました。以下3点の違いを理解しておきましょう。
補償範囲
人身傷害保険では契約のバイクに搭乗中の事故のみ補償するタイプとそれに加えて記名被保険者とその家族については他のバイクに搭乗中の事故、歩行中や自転車搭乗中の自動車事故(バイク含む)も補償されるタイプが用意されています。一方で搭乗者傷害保険は契約のバイクに搭乗中の事故のみ補償の対象となります。
人身傷害保険 | 人身傷害保険 (搭乗中のみ補償) |
搭乗者傷害保険 | |
---|---|---|---|
契約のバイクに搭乗中 | ○ | ○ | ○ |
他のバイク※1に搭乗中 | ○※2 | × | × |
歩行中や自転車搭乗中 | ○※2 | × | × |
※1 契約のバイクと同一の用途・車種に限ります(二輪自動車で契約の場合は二輪自動車、原動機付自転車で契約の場合は原動機付自転車)。
※2 補償の対象となるのは記名被保険者、その配偶者、(記名被保険者またはその配偶者の)同居の親族もしくは別居の未婚の子です。
支払われる保険金
人身傷害保険では保険金額を限度として実際の損害額が保険金として支払われるのに対し、搭乗者傷害保険ではケガの部位や症状に応じてあらかじめ決められた金額が保険金として支払われます。搭乗者傷害保険は定額での支払いなので実際の治療費に対して不足する可能性もあります。
支払われるタイミング
人身傷害保険は実際の損害額が支払われるので損害額がどれだけになるのかの確定を待つ必要があります。ただし、過失割合に関係なく支払われるので示談交渉の結果を待つ必要はありません。
一方、搭乗者傷害はケガの部位や症状に応じた支払いとなるので損害額がいくらになるのかの確定を待つ必要はありません。そのため、人身傷害保険よりもスピーディな支払いとなります。
ファミリーバイク特約で補償される?
原付バイクの保険には任意のバイク保険の他にファミリーバイク特約という選択もあります。ファミリーバイク特約でも二人乗り時の補償を受けることはできますが、50cc以下の原付バイクはそもそも二人乗りが認められていません。そのため、ファミリーバイク特約で補償を受けられるのは51cc以上125cc以下で乗車定員が2名の原付バイクに限ります。
自損事故型と人身傷害型
ファミリーバイク特約には一般的に自損事故型と人身傷害型の2つのタイプがあります。対人賠償や対物賠償はともに主契約の自動車保険の内容で支払われますが、自分側の死傷への補償について自損事故型では基本的に相手のある事故では補償を受けられません。人身傷害型では自損事故でも相手のある事故でも補償を受けられます。
人身傷害型の方が補償範囲が広い分、保険料も高くなるのですが、後ろに家族を乗せて運転することがあるのであれば人身傷害型の方が安心できるのではないでしょうか。なお、主契約である自動車保険に人身傷害保険をつけていない場合は基本的にファミリーバイク特約でも人身傷害型を選べないので注意してください。
自損事故型 | 人身傷害型 | ||
---|---|---|---|
相手への補償 | ケガ | ○ | ○ |
車・バイク・モノ | ○ | ○ | |
自分への補償 | ケガ | △※ | ○ |
バイク・モノ | × | × |
※相手がいない単独事故や、相手方に過失がないなど対人賠償や自賠責保険で補償を受けられない場合に補償される
二人乗りができる条件はきちんと守ろう!
上で紹介してきた通り、二人乗りであってもバイク保険できちんと補償を受けることができます。しかしそれは二人乗りができるルールを守ってこそのことです。二人乗りの規制は安全のために行われているのできちんと守るようにしましょう。
バイクの二人乗りができる条件(一般道)
- 二輪免許を取得してから1年を経過していること
- 排気量が50cc超で乗車定員2名であること
バイクを二人乗りで運転できるのは、小型限定を含む普通二輪免許もしくは大型二輪免許を取得してから1年を経過、もしくは普通二輪免許と大型二輪免許の通算で1年以上経過している場合です。
また、バイクの方にも制限があり、50cc以下の原付では二人乗りができません。50cc超のバイクでもパッセンジャー(同乗者)用の乗車装置を備えておらず、乗車定員が1名のバイクもあります。そうしたバイクでは二人乗りをすることができません。
バイクの二人乗りができる条件(高速道路)
- 運転者の年齢が20歳以上
- 二輪免許を取得してから3年を経過していること
- 排気量が125cc超で乗車定員2名であること
- 二人乗り禁止区間ではないこと
高速道路では一般道よりも二人乗りのための条件が厳しくなっています。まず、運転者の条件が20歳以上で二輪免許を取得してから3年を経過となっています。同乗者には年齢の制限はありません。また、普通二輪免許と大型二輪免許の通算で3年以上でも問題ありません。
バイクについても排気量が125cc超へと条件が厳しくなっています。維持費の面から人気の125ccのバイクでは高速道路で二人乗りをすることができません。もちろん、パッセンジャー用の乗車装置を備えておらず乗車定員が1名のバイクについても二人乗りができません。
そして、これらの条件を満たしていても首都高速道路の一部ではバイクの二人乗りが禁止されている区間があり、その区間では二人乗りで通行することが禁止されています。都内を走る予定のある方は他の高速道路と同じつもりで違反してしまわないように注意しましょう。
首都高速道路における自動二輪車の二人乗り禁止規制範囲については警視庁のサイトをご確認ください。
まとめ
バイクを二人乗りできるルールを守っていれば、二人乗り時の事故で死傷してしまっても自賠責保険やバイク保険で補償を受けることができます。自賠責保険だけでは補償内容が限られるので、相手方への賠償のことも含め、任意のバイク保険にも加入しておきましょう。家族を乗せる場合は任意保険だと対人賠償では補償されないので、人身傷害保険や搭乗者傷害保険で備えておくのが安心です。バイク保険一括見積もりサービスで保険料や補償内容を比較してみましょう。