いざ、交通事故にあった際、必ずしも相手方が保険に加入しているとは限りません。そんな車と事故を起こした際、相手方に支払い能力があるとは限らず十分な補償を受け取れないこともあります。そんな時に役立つ特約が無保険車傷害特約です。
無保険車傷害特約とは?
バイク事故で死亡または後遺障害を負ったのにもかかわらず、ひき逃げにより相手の車がわからない、相手の車が無保険であった等で十分に補償を受け取れない場合、加害者が負担すべき損害賠償額のうち自賠責保険等の保険金を超える額について、保険金額を限度に保険金が支払われる特約です。
対人賠償保険に加入していない車・バイクの割合
損害保険料率算出機構「自動車保険の概況(2023年度版)」によると2023年3月末時点で対人賠償保険に加入している自家用普通自動車は79.6%、二輪車は46.7%にすぎません(共済は含んでいません。)。つまり交通事故にあった際自動車の20%強とバイクの50%前後は対人賠償保険に加入していないことがわかっています。相手方が自賠責保険のみの場合、死亡時の上限金額は3,000万円、後遺障害の場合は等級によって変動し最高4,000万円までしか支払われません。
場合によっては以下に示した高額賠償例のような金額を受け取れるはずだったにも係わらず、受け取れるはずだった金額を受け取ることができない場合もあります。こうした認定損害額すべてが賄われるとは限りませんが、残された家族の生活を考えるならば受け取れるだけ受け取れるようにしておきたいところです。
認定総損害額 | 態様 | 裁判所 | 判決年 | 被害者年齢性別 | 被害者職業 |
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52,853万円 | 死亡 | 横浜地裁 | 2011年 | 男41歳 | 眼科開業医 |
45,381万円 | 後遺障害 | 札幌地裁 | 2016年 | 男30歳 | 公務員 |
45,375万円 | 後遺障害 | 横浜地裁 | 2017年 | 男50歳 | コンサルタント |
ひき逃げの件数
令和2年版 犯罪白書 第4編/第1章/第2節/3 ひき逃げ事件によると令和元年には7,491件のひき逃げ事件が発生し、4,823件が検挙されています。死亡事故の場合100%を超える検挙率でしたが、重症に限ってみると84.2%と相手が見つからないケースがまだまだあることがわかります。また、この検挙率に限って言えば数年前にひき逃げをした件で検挙などの数字も含まれるため、実際には必要な時に補償を請求することが不可能である可能性もあります。この検挙率から読み取れる数字よりもひき逃げ被害にあう可能性は高いわけです。
ひき逃げの場合も自賠責保険加入者によって事故を起こされた場合と同程度の額を政府保障事業制度から受け取ることが可能です。そのため、全く補償を受けられないわけではありません。ですが、あくまでも受け取れる金額は自賠責保険の範疇ですから十分な補償を受けられない可能性もあります。十分な補償を受けたいのであれば無保険車傷害特約に加入するといいでしょう。
補償される場合・補償されない場合
補償される場合
対人賠償保険のついていない車や無保険の車、もしくは対人賠償保険が不十分な車やバイクに衝突されて死亡もしくは後遺障害を負った際に加害者側の保険による補償で足りない差額分が補償されます。
つまり、相手の支払い能力に関係なくもらうべき補償金額を自分の特約の上限金額まで確実に受け取れるというわけです。
また、相手方に対人賠償保険が付いているのにもかかわらず、相手の運転者が年齢条件を満たしていないような場合など相手側の保険会社から保険金が支払われない際も補償を受けることができます。
補償されない場合
以下のような場合や、後遺障害に満たないケガでは補償が受けられません。
- 被保険者が酒気帯び、無免許、違法薬物を服用していた際、その本人に生じた傷害
- 被保険者がバイク所持者の許可なく搭乗していた場合に生じた傷害
- 闘争行為や自殺行為、犯罪行為によって生じた傷害
- 脳疾患、疾病、心神喪失によって生じた損害や傷害
- 災害による傷害
- 競技や曲技、またそれらを行う場所での使用によって生じた傷害
- 危険物を業務として牽引したことによって生じた傷害
つまり、重大な過失のない範囲で運転していた際に事故にあい、相手から十分に補償を受けられない時のみ補償されるわけです。
支払われる保険金
保険金額を上限として、被保険者が受けた損害額から自賠責保険や相手方の対人賠償保険などから支払われる保険金など他で支払われる金額を除いた額が支払われます。
限度額は多くの会社で2億円となっています。保険会社によって異なる場合もあるので詳細は保険会社にご確認ください。
また、この特約で受け取れる補償は相手方の自賠責保険、任意保険、ひき逃げの場合は政府保障事業制度で受け取れる金額との差額です。そもそも、相手方の保険や政府保障事業制度で十分な場合は無保険車傷害特約から保険金が支払われることはありません。
当然二重に受け取ることもできないので注意しましょう。
保険に加入する際に心がけたいこと
保険には過不足なく加入することが大事です。自賠責保険だけでは対人賠償が十分ではないから任意保険に入る、車両保険には別で加入しているから、特約の車両保険は入らないなど保険が必要になる場面を想像しながらあらゆる場面に対応できるように加入することが重要です。つまり、無保険車傷害特約に加入するのも、事故にあった際に相手が保険加入していない場合に備えるためだというわけです。
一方で保険料が高い場合は、本来は必要のない保険や必要以上の補償金額を保険にかけているからかもしれません。
もし任意保険に加入していない、もしくは保険料が高いと感じているのであれば一度弊社の一括見積もりで保険料を算出してみましょう。ベストな保険に入るためにも便利なのでぜひ検討してみてください。